節約を「食費」から始めてはいけません
離婚後、最初の月の通帳を見たときのことを、今でも覚えています。
収入は減ったのに、家賃も保険も携帯代も、結婚していたころのままそこにありました。二人で分けていた負担が、そっくり自分ひとりの肩に乗っている。当たり前のことなのに、数字で突きつけられると呼吸が浅くなりました。
そのとき私が最初にやったのは、スーパーで安い豚肉を探すことでした。
これが、遠回りでした。
食費を月5,000円削るのは、毎日の努力が必要です。でも通信費を月5,000円削るのは、一度手続きをすれば、あとは何もしなくても毎月続きます。同じ5,000円でも、必要なエネルギーがまったく違う。
この記事では、離婚後の家計をどの順番で立て直すか、効果の大きいものから整理します。
Step 0:削る前に「名義変更」を終わらせる
見落とされがちですが、ここが最優先です。名義や住所が旧姓・旧住所のままだと、受けられるはずの支援が受けられません。
チェックリストとして使ってください。
- [ ] 健康保険(会社の保険 or 国民健康保険への加入手続き)
- [ ] 国民年金の種別変更
- [ ] 銀行口座・クレジットカードの氏名/住所
- [ ] 生命保険の受取人(元配偶者のままになっていませんか)
- [ ] 学資保険の契約者名義
- [ ] 自動車の名義・任意保険の記名被保険者
- [ ] 携帯電話、電気・ガス・水道の契約者
- [ ] 子どもの姓と戸籍(家庭裁判所の許可が必要なケースあり)
特に生命保険の受取人は要注意です。私は半年後に気づきました。ここを直さないまま万一のことがあれば、子どもにお金が渡りません。
Step 1:住居費(効果:★★★★★)
固定費の中で最大です。ここが動くと家計の景色が変わります。
目安は手取りの25〜30%以内。 これを超えていると、他をどれだけ削っても苦しいままです。
検討したい選択肢
- 公営住宅(県営・市営):ひとり親世帯は優先枠が設けられている自治体が多く、家賃は収入に応じて決まります
- ひとり親向けの家賃補助:自治体独自の助成金がある場合があります
- 実家に一時的に戻る:立て直し期間を区切って使う手として現実的
- 持ち家の扱い:ローンが残る家に住み続ける場合、名義とローン契約者の関係を必ず確認してください
引っ越しには当然コストがかかります。「引っ越し費用 ÷ 毎月の削減額」で何か月で元が取れるかを計算してから判断してください。24か月以内に回収できるなら、動く価値は十分あります。
私は結果として県外に移りましたが、家賃が下がったことで毎月の呼吸がずいぶん楽になりました。
Step 2:保険(効果:★★★★☆)
離婚後、保険は減らす部分と、むしろ増やす部分の両方があります。ここを一律に「解約して節約」とやると危険です。
増やすべき:あなた自身の死亡保障
夫婦なら残された側が働けます。でもひとり親家庭では、あなたに何かあったとき、収入がゼロになります。
子どもが独立するまでの期間に絞った**掛け捨ての定期保険(収入保障保険)**であれば、保険料は想像より安く抑えられます。貯蓄型ではなく掛け捨てで十分です。
減らせる可能性が高い:医療保険・貯蓄型保険
- 会社員なら傷病手当金、ひとり親家庭なら医療費助成があります。加えて高額療養費制度もあるため、医療保険を厚く掛ける必要性は下がります
- 貯蓄型(終身・養老)は保険料が高額になりがち。保障と貯蓄を分けたほうが効率的なケースが多いです
判断に迷ったら、保険会社の窓口ではなく中立の立場の人に相談してください。
販売手数料が発生する立場の人のアドバイスは、どうしても偏ります。
Step 3:通信費(効果:★★★★☆/難易度:低)
一番おすすめの最初の一手がここです。 手続きだけで完結し、生活の質がほぼ落ちません。
大手キャリアから格安SIM(MVNO)に乗り換えると、一人あたり月4,000〜5,000円下がることも珍しくありません。親子2台なら年間10万円前後の差になります。
- 自宅にWi-Fiがあるなら、スマホのデータ容量は少なくて済みます
- 光回線とのセット割、家族割も確認を
- 子どものスマホは、格安SIMのほうが使いすぎ防止の面でも管理しやすいです
「手続きが面倒」の一言で、年10万円を払い続けるのはもったいない。休日の午前中、2時間で終わります。
Step 4:車(効果:★★★★☆/地域による)
地方在住なら車は生活必需品です。私も手放せません。ただ維持費は年間40〜50万円規模になることは自覚しておく必要があります。
- 任意保険:等級の引き継ぎ、年間走行距離、運転者限定を見直す
- 車両保険:年式が古い車なら外す判断もありえます
- 車種:軽自動車なら税金・車検・燃費すべてが下がります
- 2台持ちなら1台にできないか
都市部で公共交通が使えるなら、手放すのが最大の節約です。ここは住む場所とセットで考えてください。
Step 5:光熱費・サブスク(効果:★★☆☆☆)
金額は小さいですが、手間もほぼゼロです。
- 電気・ガスのセット割
- アンペア数の見直し(大きすぎる契約になっていることがあります)
- 使っていないサブスク(クレジットカードの明細を1年分だけ確認)
- 子どもが行きたがっていない習い事
最後の項目だけは、慎重に。 子どもの体験にかけるお金を最初に削ると、家計は整っても大切なものが削れていきます。削る順番は、いつも大人の固定費が先です。
Step 6:減らすだけでなく「申請して増やす」
固定費と同じくらい重要なのがこちらです。ひとり親家庭向けの制度は、申請しなければ1円も受け取れません。
- 児童扶養手当
- ひとり親家庭等医療費助成
- 就学援助(学用品費・給食費・修学旅行費など)
- 国民年金保険料・国民健康保険料の減免
- 上下水道料金の減免
- 保育料の軽減
- 粗大ごみ処理手数料の減免
- JR通勤定期券の割引(児童扶養手当受給世帯)
- 高等職業訓練促進給付金/自立支援教育訓練給付金(資格取得を目指す場合)
自治体によって内容も名称も異なります。役所では**「ひとり親家庭が使える制度を全部教えてください」と包括的に聞くのが確実**です。窓口ごとに担当が分かれているので、こちらから聞かないと出てこない制度があります。
立て直しのロードマップ
離婚後1か月以内 名義変更・住所変更を終わらせる/児童扶養手当など主要な手当を申請する
3か月以内 通信費を格安SIMへ/使っていないサブスクを解約/保険の受取人を変更
6か月以内 保険全体を見直す(死亡保障は増やす、医療・貯蓄型は精査)/車の保険を更新時に見直す
1年以内 住居費の方向性を決める(更新時期に合わせて判断)
順番に意味があります。手続きだけで済むものから片づけて、判断が重いものは後回しにしてください。離婚直後は、大きな決断をするだけの気力が残っていないことが多いですから。
やってはいけない3つのこと
① リボ払い・カードローンでしのぐ 一時的に楽になりますが、翌月からの固定費が増えます。生活が回らないなら、借りる前に自治体の福祉窓口へ。母子父子寡婦福祉資金など、低利や無利子の公的な貸付があります。
② 保険をすべて解約する あなたに何かあったときの備えは、ひとり親家庭でこそ必要です。減らすものと残すものを分けてください。
③ 一気に完璧を目指す 全部を一度に見直そうとすると、疲れて何も終わりません。今月は通信費だけで十分です。
まとめ
- 節約は食費ではなく、住居費・保険・通信費という固定費から
- 名義変更を終わらせないと、使える制度が使えない
- 死亡保障は「減らす」ではなく「増やす」対象
- ひとり親向けの減免制度は、申請主義。聞かなければ出てこない
- 一度に全部やらない。手続きで済むものから順番に
離婚直後の家計は、必ず一度混乱します。
それは能力の問題ではなく、世帯の形が変わったのだから当然のことです。整えるには半年から1年かかります。焦らないでください。
※自治体制度は名称・内容が異なります 制度は改正されるため公式サイトで確認をお願いします。
📌 「うちの固定費、どこから削ればいいの?」という方へ
収入と支出、お子さんの年齢と進路希望をもとに、50年分のキャッシュフロー表を作成しています。どの固定費を、いつまでに、いくら下げれば家計が回るのか。数字で見えると判断が早くなります。

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