「この先、子どもの教育費をちゃんと払っていけるだろうか」
ひとりで家計を支えていると、この不安が頭から離れない瞬間がありますよね。子どもが「進学したい」と言ったとき、笑顔で「いいよ」と言えるだろうか——。
でも、まずお伝えしたいことがあります。教育費の不安の正体は、金額の大きさそのものではなく「全体像が見えないこと」です。いつ、いくら必要で、どんな支援が使えるのか。それが見えるだけで、不安はかなり軽くなります。
この記事では、FP1級技能士の視点から、シングルマザーの教育費について「全体像」「使える制度(2026年度の大きな変更を含む)」「お金の考え方の原則」の3つを整理します。
教育費の全体像:山は「大学」にある
まず、子ども1人にかかる教育費のざっくりした目安です。
| 進路 | 年間の目安 | ポイント |
|---|---|---|
| 公立小学校 | 約30万〜35万円 | 授業料は無料。給食費・学用品・習い事など |
| 公立中学校 | 約50万〜55万円 | 塾代が増え始める時期 |
| 高校(公立・私立) | 授業料は実質無償化へ | ただし制服・教材・部活・通学費は自己負担 |
| 大学(国公立) | 4年間で約250万〜500万円 | 自宅か一人暮らしかで大きく変わる |
| 大学(私立文系) | 4年間で約400万〜700万円 | 入学金+授業料+生活費 |
※文部科学省「子供の学習費調査」等をもとにした概算です。
この表から読み取ってほしいのは、教育費の本当の山は「大学(高校卒業後の進学)」にあるということです。
小・中学校は、毎月の家計の中でやりくりする費用が中心。高校も、後で説明する無償化でハードルが大きく下がりました。つまり——
「教育費を貯める」=「大学費用を貯める」と考えて、ほぼ間違いありません。
「子どもの教育費全部で1,000万円以上!」という数字に圧倒される必要はないんです。狙いを大学費用に絞れば、やるべきことはシンプルになります。
【2026年度】シングルマザーが使える支援制度
教育費を考えるうえで、支援制度を知っているかどうかで手取りの負担は大きく変わります。特に2026年度は制度が大きく動いた年です。
① 児童扶養手当(2026年度は月額最大48,050円)
ひとり親家庭の柱となる手当です。2026年度(2026年4月分から)の支給額は次のとおりです。
- 第1子:全部支給で月額48,050円(所得に応じて一部支給あり)
- 第2子以降:全部支給で月額11,350円が加算
物価上昇を受けて前年度より3.2%引き上げられました。所得制限がありますが、限度額も近年引き上げられているので、「前は対象外だった」という方も、あらためて確認する価値があります。
養育費を受け取っている場合はその8割相当が所得に加算される点には注意が必要です。
申請しなければ1円も支給されず、さかのぼって受け取ることもできません。まだの方は、お住まいの市区町村の窓口へ。
② 高校授業料の実質無償化(2026年4月から私立も所得制限なし)
ここが2026年の最大の変更点です。
- 公立高校:2025年度から所得制限なしで授業料実質無償(年11万8,800円支給)
- 私立高校:2026年4月から所得制限が撤廃され、支援上限が年45万7,200円(全国平均授業料の水準)に引き上げ
「私立はうちには無理」と選択肢から外していたご家庭にとって、進路の幅が広がる大きな改正です。
ただし、FPとして必ずお伝えしたい注意点があります。無償化の対象は「授業料」だけです。入学金(私立は20万円前後)、制服代、教材費、タブレット代、部活動費、通学定期代などは自己負担のまま。特に入学初年度は出費が集中するので、「高校進学時にまとまって30万〜50万円程度」は別途見込んでおくと安心です。また、支援金は自動では受け取れず、学校を通じた申請が必要です。
③ 高校生等奨学給付金(授業料以外の費用を支援)
教科書代や教材費など、授業料以外の教育費を支援する返還不要の給付金です。
従来は住民税非課税世帯などが中心でしたが、2026年度から中所得層(年収約490万円程度まで)に対象が拡大されました。ひとり親家庭では対象になるケースが多いので、高校から案内が来たら必ず申請してください。
④ 高等教育の修学支援新制度(大学の授業料減免+給付型奨学金)
大学・短大・専門学校の費用については、住民税非課税世帯とそれに準ずる世帯を対象に、授業料・入学金の減免と、返さなくてよい給付型奨学金がセットで受けられる制度があります。所得に応じて満額・2/3・1/3と段階的に支援されます。
ひとり親家庭は所得基準に該当するケースが多く、「大学費用の山」を国の制度で大きく削れる可能性がある、いちばん知っておいてほしい制度です。対象になるかは日本学生支援機構(JASSO)の進学資金シミュレーターで事前に確認できます。
⑤ 母子父子寡婦福祉資金貸付金(無利子または低利の公的貸付)
それでも足りない部分は、自治体のひとり親向け公的貸付(修学資金・就学支度資金など)が使えます。無利子または低利で、民間の教育ローンより条件が有利です。借りる順番としては、①給付(返さなくていいお金)→②公的貸付→③奨学金の貸与型、の順で検討するのが鉄則です。
FPが伝えたい、教育費の考え方5つの原則
原則1:全部を貯金でまかなおうとしない
教育費は「貯金」「毎月の家計」「制度・給付」「必要なら貸付・奨学金」の4つの財布の組み合わせで払うものです。全額を貯金で用意しようとすると、目標が大きすぎて挫折します。制度で削れる部分を先に確認してから、残りを貯める。この順番が大切です。
原則2:児童手当は「ないもの」として大学費用へ
児童手当(全世帯対象のほう)は、生まれてから高校卒業まで受け取ると総額200万円を超えます。これを生活費に混ぜずに専用口座へ自動で振り分けるだけで、大学の入学金+初年度授業料の相当部分が準備できます。児童扶養手当のほうは生活の土台に使って構いません。役割を分けるのがコツです。
原則3:高校までは家計から、貯金は大学まで取り崩さない
塾代や部活代が重なると、つい教育費用の貯金に手を付けたくなります。でも山は大学。「高校までは毎月の家計でやりくりし、貯めたお金は高校卒業後まで触らない」とルールを決めておくと、いちばん必要なときにお金が残ります。
原則4:奨学金は「悪」ではない。ただし親子で仕組みを理解してから
「子どもに借金を背負わせたくない」という気持ち、よく分かります。ただ、貸与型奨学金は年利の低い制度であり、使い方次第では進学の可能性を広げる道具になります。大切なのは、借りる前に「卒業後に月いくら、何年返すのか」を親子で数字で共有すること。返済額を知ったうえで選んだ進路なら、それは子ども自身の意思決定です。
原則5:お母さん自身の老後資金を犠牲にしない
これはFPとして、いちばん強くお伝えしたい原則です。教育費には奨学金という手段がありますが、老後資金には「老後ローン」はありません。自分の将来の生活費を全部教育費に注ぎ込んでしまうと、将来子どもに経済的な負担をかけることになりかねません。iDeCoやNISAでの自分のための積立を細くても止めないこと。それは子どものためでもあります。
今日からできる3ステップ
ステップ1:使える制度を棚卸しする(所要30分)
児童扶養手当・高校の就学支援金・奨学給付金・修学支援新制度。この記事に出てきた制度のうち、わが家が対象になりそうなものをメモするだけでOKです。
ステップ2:「大学までの残り年数×貯められる月額」を計算する
例えば子どもが今10歳なら、大学入学まで8年=96か月。月1万円なら96万円、月2万円なら192万円。児童手当を足せば、さらに上乗せできます。「間に合うか」ではなく「今から何が積めるか」で考えます。
ステップ3:教育費専用口座を1つ作り、自動化する
意思の力に頼らず、児童手当の入金と毎月の積立が自動で貯まる仕組みを作ってしまえば、あとは日々の生活に集中できます。
まとめ:不安は「見える化」で小さくなる
シングルマザーの教育費は、たしかに簡単なテーマではありません。でも、2026年の制度改正で高校の負担は大きく下がり、大学にも給付型の支援があります。山の場所(大学)が分かり、使える制度が分かり、今月から積める金額が分かれば、漠然とした不安は「やることリスト」に変わります。
ひとりで全部背負わなくて大丈夫。制度はあなたが使うためにあります。
「うちの場合は具体的にいくら貯めればいいの?」「進学プランごとに比べたい」という方は、個別のライフプラン表を一緒に作ると、数字がはっきり見えて安心につながります。お問い合わせから、FP相談いただけます。
※本記事の制度情報は2026年7月時点のものです。金額や要件は変更される場合があるため、最新情報は各自治体・文部科学省・日本学生支援機構の公式サイトをご確認ください。

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